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ソマリア沖の海賊の話(その2:マグロ大王 木村さん)

前回は、10年間ぐらい世界の海運社会を悩まし続けたソマリア沖の海賊の略奪行為が最近は終息したという話題でした。

その解決にあたっては、海上安全を保つ機関や軍事力が世界中から集まって処理にあたったのも事実でしょうが、新聞情報の記載にはない穏やかな方法により、海賊行為が無くなっていったという側面もあったようです。その立役者が、意外にもというと大変失礼ですが、毎年のようにお正月の築地の初競りで本マグロを最高値で競り落としていく男、すしざんまいの「マグロ大王」の社長である木村清さんだとのことです。

 

ソマリア沖の海賊とマグロ大王の木村さんとの関係とは一体どういう関係なのか?ソマリア沖は、キハダマグロ、バチマグロなどが獲れる世界的に好い漁場です。アフリカ大陸のソマリア連邦共和国の西側に隣接する小さなジプチ共和国がありますが、木村さんの会社はジプチ共和国とはマグロをはじめとした多くの種類の魚の加工・流通の技術提供を中心にビジネス取引を行ってきました。

ソマリア国の漁師たちは、魚を獲っても保存や加工技術がなかったため輸出もできずにいました。1990年代に始まった内戦により政情が不安定で、海賊活動を行うようになります。さらに追い打ちをかけるように、2004年に起きたスマトラ地震の津波を受けたことで、アフリカ大陸の東岸一体は壊滅的な打撃を受けました。そんな中、木村さんはジプチの隣国ソマリアにも手を差し伸べるようになるのです。

 

木村さんは若いころ、自衛隊員でした。ソマリアの海賊問題が起きてから、ソマリア海域を通過する船舶を護衛するため、多くの国が軍隊や海上保安部隊を派遣するようになり、日本も自衛隊や海上保安庁の船舶を派遣するに至ります。自衛隊OBの木村さんも、この海賊問題への取り組みにかかわり始めます。彼の結論は、海賊を根幹から撲滅するにはそこに住んでいる人々の暮らしをよくし、豊かにすることと考えます。

彼の行動は、ジプチ政府や海賊に通じているソマリア政府まで広がります。そして徐々に現地の漁民につながっていきます。漁業協同組合を通じて漁業指導をしたり、日本から中古の漁船を持ち込んだりもしました。海賊たちは、安全に生活できるならと喜んで漁民に戻っていったようです。

Fishing boat trawler and fisherman on the water ocean and dramatic clouds sky at sunrise / fishing boat sea at dawn silhouette sunset

いい話ですよね。日本の一般紙や日本海事新聞の特集で、ソマリア沖の海賊が2019年には発生ゼロになったという記事がありましたが、そこに書かれているのは自衛隊員や海上保安庁の職員の苦労話や各国の軍隊などの支援部隊との協力の話が中心でした。もちろん、世界の軍事力や警察力のチカラによる、海賊に対する抑止効果があったことも事実なのでしょうが、全く違うアプローチとしての貧しい庶民への働く場(魚を獲るという仕事)の提供が、海賊活動を減少させたとすれば、同じ話題でも全然ちがう話に聞こえてきます。実際のところソマリアの海賊たちへ漁場の仕事を提供するのに、木村さんが多大な労力や知恵を注いだのでしょうから、その過程において木村さんの作業は危険で、厳しい環境で行われたはずです。海賊を撲滅したのは、世界の軍事部隊の協力体制だったのか、或いは一人のおじさんの仕事作りと海賊への支援だったのかと、深く詮索することは止めておきます。恐らく、そのどちらかの一つに絞ることはできないのでしょう。

私はたまたま同じテーマに関して、別々の方法や展開が記された二つの文章を読む機会があったので、こんなコメントになりましたが、世の中の事件やでき事には、どっちが正解か分からないといような状況や、うっかり見落としているというものがいっぱいありそうです。このソマリア海賊の解決にあたって、本質的に機能したのは軍事力だったのか、木村さんの人間力だったのかというところについては、今後の事態の推移を見ていくのも面白いかもしれません。

 

参考文献:『マグロ大王 木村清 ダメだと思った時が夜明け前』 講談社

ソマリア海賊の話は、170ページ。

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