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超大型コンテナ船(EVER GIVEN)のスエズ運河座礁(その4:経済損失はどうなるの?)

EVER GIVENの話題が続いて、そろそろ飽きられる頃かと思います。

もう一回、この話題にお付き合いください。この船は3月以来、スエズ運河内のグレートビター湖で留め置かれたままでしたが、漸く解放されるようです。7月5日の報道によると、スエズ運河庁が船主に請求している賠償金額に関する交渉で、正式合意が成立したとのことです。

当初のスエズ運河庁による請求額約1000億円から約600億円に減額されて交渉が続いていたのですが、最終の賠償額は不明です。そもそもEVER GIVENのスエズ運河の通航に当たっては、スエズ運河庁のパイロットが乗船して運航を誘導したのであって、また、気象条件等により通航の安全が妨げられるような場合は、運河庁が判断により通航の可否が決められるのであろうから、その判断が誤っていたのならば、スエズ運河庁の責任だろうと言えるのでは?というのが常識な考え方です。ただ、スエズ運河はエジプト国の領域ですから、自国のルールに則り処理しているということなのでしょう。その結果が、600億円の請求でした。

スエズ運河庁が主張するように、Ever Givenの船体が乗り上げた場所の土石の取り除き作業とタグボートの手配に諸経費が発生したのは、事実だろうと考えます。但し、座礁から数日後に本船の脱出作業が完了し、さらには、一週間程度で運河の入り口付近で待機をしていた300隻ほどの船舶も、通航し終わった状況を見るに、スエズ運河当局は、運河の通航料をほぼ予定通り確保できていることと想像します。土石取り除き作業とタグボート手配だけで、1000億円を請求したのには理解に苦しみます。その理解に苦しむ請求が、運河庁から船主に向けて行われていたのです。

 

私がスエズ運河庁の請求以上に、今回の事故で発生する本質的で経済的な被害だと考えるのは、船舶Ever Given上にある貨物が本来届くべきところに、届かないことによる貨物の荷主が受ける被害です。アジアからヨーロッパに向かう途中の出来事でしたから、船上の貨物はそのほとんどがアジアで積まれてヨーロッパに積み下ろされる予定のものでしょう。本来だったら、3月から4月には、受け荷主の許に到着しているはずで、そこから販売されたり、さらなる生産に回されたりと経済活動の流れに乗っていたはずです。

 

受け荷主の立場だとすれば、船上にある貨物の代替物を別のルートで取り寄せるなどの手配をしている会社もあるかもしれませんが、手の施しようもないというような会社もあることと思います。このように、突如海上輸送で運ばれているものが、輸送の途中で不慮の事故に遭遇する場合、どのような処理が必要になるのでしょうか?

 

貨物輸送にはいろいろな立場の人間が絡んでいます。貨物の送り手(荷主)、貨物の受け取り手(受け荷主)、輸送者(運航会社・船主・船舶管理会社)、他の当事者(今回の場合はスエズ運河庁、エジプト政府)、保険会社、などです。今回の事故は、非常に多くの当事者を巻き込んで、その上、解決には相当の時間が掛かりそうです。

 

今回は、20,000TEU型の超大型コンテナ船事案ですので、荷主の数も尋常ではありません。荷主の視点で、見てみましょう。貨物の送り手(荷主)から見ると、多くの荷主は自分にはもう関係ないと、胸をなでおろしている人たちが多いかもしれません。なぜなら、貨物の売買代金は、通常は輸送貨物の輸送会社(船会社)による輸送引き受けが完了し、送り主が船会社から貨物受取り証(B/L)を入手すれば、銀行で貨物代金に換金できるからです。取り敢えず、貨物の送り手はトラブルに巻き込まれていない前提で、話を進めます。貨物の売り買いのそれぞれの立場で言うと買い手(受け荷主)側が、いつ貨物が届くかどうかが分からない状態で、銀行の口座から売買代金が引き落とされていることになります。要するに、この状態にある受け荷主は、お金を支払ったのに貨物が無いという状態です。

この状態で受け荷主は、何をすればよいのでしょう。受け荷主は、船荷証券を保持しています。本来であれば、貨物の到着時に船荷証券と引き換えに貨物を受け取ることが出来るのですが、今回、貨物はエジプトのグレートビター湖の船の上にあります。受け荷主からすれば、船会社のせいで到着が遅れているのだから、責任を取れと言いたいところですが、船荷証券上は到着の遅れに何ら責任はないと謳っています。損害を賠償するのは、貨物の滅失が明らかになったときです。恐らく、貨物は船の上で消えることなく、ただ佇んでいたのです。

現状は船荷証券上の輸送責任が存在するだけです。この案件では、船主の正栄汽船が共同海損(GA)を宣言して、救助費用をこの枠組みで処理することを明らかにしました。となると、船上の貨物がそれぞれの輸送契約に基づき処理されるのでなく、共同海損処理として処理されると理解します。ということは個別貨物を受け荷主や運航会社の意図で自由に処理することができないのではと想像します。このあたりの実務は私の想像を超えます。金額の算定を含め、モノの流れをどうすうのかなど、これからも大変な作業が発生することでしょうね。貨物が今現在、安全な状態で船上に置かれていたとしても、それが受け荷主の許に届くのか?何等か別の手段で処分されるのか?も分かりません。

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