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船の通信の移り変わり

2か月ほど前の10月22日の日本海事新聞に、『海の情報格差 拡大、船陸間通信、船員の生活左右』の見出しの記事がありました。

外航船の船陸間大容量通信の普及が進む中、旧世代の通信環境の船舶と、新しい進んだ環境にある船舶の間で、情報格差が鮮明になっていると言う内容です。さらなる説明によれば、一部の船は依然として、Eメールだけの通信に限られており、長期乗船中の船員は陸上の家族から隔絶された海上生活を強いられているとの内容でした。

 

この記事を書かれた記者の方は、ことさら一部船舶の船上生活の不便さを強調したかったのだと思いますが、私はちょっとだけ、違う感覚を覚えました。どういうことかと言いますと、一般社会での通信の仕組みや情報機器の発展があまりにも著しいので、それが当たり前と感じる世代の人(乗組員)にとっては十分に通信環境が整っている船舶でも、満足できない時代になったのだろうということです。

 

かつて、一旦、港を出て大海の航海を始めると何か月もの間、乗組員は陸上の家族や友人との連絡が一切取れませんでした。ほんの30年~40年前の事です。その頃と比較すると、現代に生きる船乗りさんは、インターネットがあれば地球上どこにいても誰とでもつながるのが当たり前という気持ちになるのだと思います。物理的には、人工衛星の利用により海の上からも陸への連絡は取れる訳ですから、海上生活において親しい人と連絡が取れなくなることにストレスがたまるのだと思います。海に囲まれ、船上の人間だけと話すことしかできない孤立状態である船上生活は、ついこの間の過去では当然だったことが、この数十年で技術革新が進んだあまり、かつては普通に受け入れられていたことが不満の対象になるのだということが分かり、思わずその流れを振り返ってみました。

 

私が何を、振り返ったかといいますと、新入社員時代(1979年)の横浜港での本船オペレーション担当(入出港や荷役手配)を任されていたときの、本船とのやり取りです。船舶が日本沿岸を航海しているとき、その本船の動静を確認するには、日本の沿岸にある電波局を経由して、電報によるやり取りで本船の動静を確認していました。横浜入港間近の船舶とは、銚子電波局を経由して電報を使いました。電報を打つ際も、無駄な通信費用を発生させないようにと気にしながら、情報を求めましたが、内容は“チャクジコク(着時刻)、シラセ”位の必要最小限の言葉です。手短にやり取りするというのが、海運業に携わる人間に求められる仕事のやり方でした。極力、費用を抑えよと徹底されていたからです。そんな考え方が浸透していますから、日本人乗組員が日本の沿岸を近づいてもプライベートで、家族の方々と電話で話すなんていうことは無かった時代でした。

 

一旦、大海原での航海が始まると簡単には、陸との連絡が取れなくなります。地上局経由の電波が届かなくなる位置にいる船から陸上との間で取られていた通信手段は「モールス信号」です。船舶には、通信士の資格を持つ乗組員が通信を担うのですが、「トン・ツー」という長短2種類の信号を組み合わせることによってアルファベットを表現して連絡を取るのです。これで分かるように、普段の会話をする道具ではなかったのです。

 

モールス信号が海運の世界で使われるのは、20世紀初頭ぐらいからです。1912年に、タイタニック号の処女航海での氷山衝突の悲劇が起きました。衝突の数時間前から、モールス信号により他船からの航路情報として、タイタニック号の進む方面には氷山が多いと言う情報が入っていましたが、その情報を耳にした船長も社長も、気にも留めなかったという話があります。通信情報というものは、まだ理解できない時代だったのかもしれません。

100年以上も前のあの頃、タイタニック号がEメール情報などにより、こと細かに気象情報や氷山の位置情報などを入手していたら、事故は防げたことしょう。私の働きだした40年前の1979年には、気象情報の量や質はかなり充実してきましたが、一般的な船が陸上と取り交わす通信手段という観点で考えてみると、あまりタイタニック号時代と違いがなかったのだという気がしています。

 

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