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貨物船、モーリシャス島沖座礁・重油流出事故について(その2:事故の法的処理)

日本の貨物船がモーリシャス島沖で座礁し、燃料油を漏出した事件では、日本政府は、国際緊急援助隊・専門家チームをも結成し、現地に派遣するなど、単に当事者である民間の海運会社に留まらずに、政治判断が求められる案件になりました。

フランス政府も、モーリシャス政府からの要請を受けて、油回収業者を手配するなど、複数の国家が事故と取り組む体制となっています。

モーリシャスという世界的な観光地であることもその理由かもしれませんが、やはり、相当の損害発生が予想されるからだと思います。損害額も気になることですが、その損害がどのように補填されていくかを、整理してみようと思います。一般には、このような海難事故の損害の殆どが保険処理です。この事故をきっかけに、私自身今まで、縁のなかった保険処理に関して、どのような仕組みになっているのかを調べてみました。思わず驚いたのは、海洋汚染損害に係る事故に関して、条約の数だけでも、世界中に10個ぐらいあります。今回のような一般貨物船の燃料油の漏油事故と、石油を貨物として運ぶタンカーからの漏油事故との間でも、適用の条約が違うのです。そのことは取り敢えず横に置きまして、今回の事故に関係するものを、ご説明します。

Female tourist woman caressing and admiring big old Aldabra giant tortoises, Aldabrachelys gigantea, in National Marine Park on Curieuse island, close to Praslin on Seychelles.

 

今回、多くの新聞記事で取り上げられるのが、バンカー条約です。バンカーとは船の燃料油を意味します。この条約の目的は「燃料油の流出により、生ずる汚染損害について、迅速かつ効果的な賠償の支払いを確保する」ことを、目的として採択された条約です。この条約を利用する立場の当事者は、モーリシャス国家及び国民になります。この条約のポイントは何かというと、保険処理において、被害者が直接に保険会社への求償が可能になることです。被害者が事故を起こした船主との間でやり取りをするのではなく、保険会社とのやり取りとなることで迅速な処理が可能となるとされます。もう一つ難破物除去ナイロビ条約があります。この条約は、座礁した船舶のような難破物を取り除く責任は船舶所有者の船主が有するものの、その除去に莫大な費用が発生するため、船舶所有者が費用を負担できず放置されると言う事例が少なからずあったため、早期の難破物除去の責任のルールが求められて策定されたとのことです。この条約でも、被害者から保険会社への直接請求権が認められています。

 今回のような、座礁による燃料油の事故が起きた場合、船主の動きが鈍いときは、上述の二つの条約に基づき、被害者側が保険会社と直接の求償手続きが進むでしょうが、

その前提は、船主が予めそのような求償に耐えられる保険に入ることです。これについても、条約により加入が強制されています。その適用の条約の名前はというと、海事債権責任制限条約(LLMC)です。これには、海難事故に係る船舶所有者の責任として、船舶のトン数に応じた一定限度に制限された賠償額を払うことが定められています。船舶の所有者にとっては、無過失の事故でも支払い責任が発生しますが、この条約に基づき処理することとなります。

この三つの条約について、簡単に次の表にまとめました。

 

 本船の座礁による漏油事故処理の、法に基づく保険処理はざっと上述の流れですが、今回の場合も今後、法的処理ですべての損害がカバーされるということはなかなか難しいのではと予想します。将来、環境がどれだけ回復するのか?地元住民の生活への影響はどれほどなのか?は、いろいろ問題が残る可能性があります。今回、船舶の運航者である商船三井は、船舶の船主ではないので直接的に法的な責任のある立場ではないのですが、社会的責任を負うのは当然として、基金を設置し、約10億円の支援をすることを表明しました。モーリシャスにとっても世界の支援環境にとっても、有効なことだと思います。

世界の海運が運航している船舶の燃料は、殆ど現時点では殆どが石油です。二酸化炭素排出による問題や今回のような重油の海上漏出のリスクを根本的に廃絶することが、求められます。単なる事故処理だけでなく、世界の海運界では、まだまだ今後のテーマとして残ります。

Underwater scene with school of fish over stones bottom. Tropical blue ocean

 

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