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日本の海運はどのように歩んで来たのか(その4: 20世紀から21世紀への展開)

前回は、日本海運の遠洋航路開拓の先駆けとなるボンベイ航路開設に関する日本郵船と大阪商船の展開場面に触れました。

明治から大正にかけては、欧米諸国を手本にして日本を近代国家にしようとする国家の方針に追随して、海運会社もその社員も同じ心持ちで、日々の業務を取り組んでいたのだろうと想像します。当時の社員や一般国民の意識がどんなだったのか?なんて、今や身近な家族にしても先輩にしてももはや、聞く相手はいません。推測するしか手段はありませんが、資料を基に海運業の流れを眺めてみます。

 

手許に商船三井の創業百年史があるので、利用します。私が会社生活6年目の1984年に創立百周年を迎えた時に、社員に配られた図書です。恥ずかしながらそこから40年近く、本は寝かしたままでしたが、今になって初めて読みました。改めて、明治から昭和初期にかけての海運業は国家の意向に沿いながら進んできたことを感じました。そして、戦争に大きな影響を受けてきた産業だったと認識しました。

 

日本海運の成長の要因となったのは、西洋に追い付け追い越せという国家と国民の意思だと思われます。それと、もう一つ、日本の海運発展の偶然の機会となったのが、第一次世界大戦だったようです。この時は、政治的にも地理的にも日本は紛争の当事国からは全く離れた位置にいました。日本の年号では、明治から大正に切り替わるタイミングです。日本の海運会社は徐々に遠洋航路の実績を積み重ねていた頃です。前回も触れましたが、日本・極東~欧州への航路には、しっかりと欧州諸国の既存の海運会社が権益を守るための組織である海運同盟がありました。日本郵船はそのメンバーとしての実績も積み上げ、大阪商船はまさに同盟加入を目指し徐々に活動を活発化し始めた時代です。そのような時代に、第一次大戦の勃発により、欧州の各海運会社の船舶は、自国の戦争に必要な船舶として徴用されます。一方、アジアからの食料や軍需品の輸送のニーズが増えますので、特に欧州の海運会社が船腹不足に陥ったという事情がありました。まさに、そんなタイミングにアジアの片隅の日本国の海運が活動するチャンスが舞い込んだのです。その時点では、欧米諸国以外の国ではその仕事を引き受けられる日本ぐらいしかなかったのです。日本海運が一気に発展したきっかけは戦争だったのです。しかし、時代が徐々に進むにつれ、日本海運のみならず日本国全体をどん底まで引き落としたのも、これまた、戦争でした。

昭和の初めは、世界の混乱を利用するようにして日本海運は事業としては粛々と、航路の開拓を積み重ねていく時期でした。昭和10年を過ぎるあたりからは、中国や南方諸島への軍の出陣に伴い、日本海運業がその動きに巻き込まれていきます。国家による船舶管理法が制定され、船舶の国家による徴用が当たり前となっていきます。さらには、海運統制協議会の設立、船員徴用令の公布がなされ、もはや自由な事業は出来なくなり、日本海運は国家の管理体制の一部となります。その結果、戦争に敗れると、海運業そのものも壊滅所状態に陥りました。

 

日本全体の海運事業としての損益の推移が見られれば、興味深いと思ったのですが、さすがに日本国全体の海運業の業績の入手は無理でした。しかし、一つの事業者の大阪商船の設立以来の損益計算書の概要が、百年史に掲載されていましたので、創立(1884年)から商船三井の合併前年(1963年)までの10年おきの数値を、抜き書きしました。ご覧ください。戦争など数多くの難関を、しぶとく乗り切ってきたことが数字から見て取れます。

 

 

時代時代の貨幣価値の違いがあるので、利益の規模の評価はできませんし、他社・他業種との違いなどについて情報が無くコメントできませんが、大阪商船の創業以来、第二次世界大戦頃まで、着実に利益を出し続けていたようです。この傾向が全部の海運会社に、当てはまるとは言えないだろうとは承知しますが、国家の動きと外航海運とが支え合う関係がある程度保たれたまま、日本の外航海運が戦前から戦後と推移していることを読みとりました。戦後の日本の高度経済成長が海運業の成長にそのまま直接的につながったかというとそうでもないし、個別の会社の存亡が激しかったのも事実ですが、総じて日本外航海運全体は明治以来の百数十年、着実に産業を維持そして発展させてきました。現在でも世界の有数の海運国の位置を保っていると言えます。

 

海に囲まれた日本だからということ、これだけでは理由にならないことは承知ですが、やはり海運国日本として発展することを海運マンOBとして、期待しています。かつてのように、海を利用する輸送だけの海運業ではもはや時代遅れのようです。環境保護に念頭に置いて、運送だけではない海の資源の研究も極めることにより、ますますの海運業・海事産業としての成長を切に願っています。

 

 

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